そのままの足で北海道のテレビ局に行く。夕方の番組に生出演するらしい。
 来月発売になるCDの宣伝と、軽いトークだけで俺も多分もう慣れたんだろう、何事もなく終わった。
 帰りのバスでほっと一息ついていたら、隣りに座っていた高原さんが心底申し訳ないという感じで俺にその手の中の手帳を見せてくる。
「ゴメンね、陸くん。明日CM撮りがあるんだ」
「え、俺単体で・・・・・・ですか?」
 今まで何回かCMの撮影はあったけど、それは全部グループの皆と。
 マネージャーさんのフォローとか、他のみんなのフォローとかで何とかやっていたような感じだった。
 けど
「うん、ゴメン!俺は付いていくから、ね?」
 俺が空じゃない事を知っている彼が側にいてくれるのは心強い。
 お願いしますと両手を合わせて頼んでくる彼に、笑いながら頷いた。
「解かりました。フォローよろしくお願いします」
「よかった。・・・・・・後一ヶ月ちょっとだから、我慢してね」
 高原さんはほっとした様子で俺に頭を下げる。
 後一ヶ月ちょっと、か。
 本当はたった3ヶ月でも、歌を主体としたソラの活動で歌わないというのはかなりの大打撃のはずだ。
 最近の音楽番組のヒットチャートでも、“天”がランキング入りしていてもプロモ映像で済ませている。その事に関して高原さんに
あちこちから苦情が来ているらしいことは俺も知っているから。
 後一ヶ月ちょっと、歌以外で俺に出来ることならなるべく引き受けようと思う。
 明日のCMの説明を一通り終えた高原さんはもう一度俺に頭を下げた。
「じゃ、ソラ、明日よろしく」
「あ、はーい」
「じゃあ今日はもうホテル行きだからな。明日の為にゆっくり休めよ」
 マネージャーの高原さんの言葉に皆「はーい」と良い返事をしていたけど、ホテルについて彼が自分の部屋に行った瞬間に
「よっし!カニだカニ!」
「今夜は飲む!」
 いいのかなぁ・・・・・・。
「お前ら、今日は初日だぞ。それに八雲、お前はまだ未成年だろうが」
 予想通りというか、何というか夕日サンが呆れたように注意をする。
 それに大人しく二人は従い、がっくりと肩を落としていた。
「ちぇー。じゃあ、ソラ、一杯だけ付きおーてや」
「え」
 お、俺酒飲めないんですけど。
 星夜くんは当然のように言うから、多分空はそれなりにイケる口だったんだろうな・・・。
 そんな事ばっかりしてるから喉壊すんだよ、空・・・・・・。
「酒は最終日まで禁止」
 俺が弟の私生活に嘆いている時に、夕日サンから厳しいお達しが下る。
「えぇぇぇ!?」
 驚いたのは俺と夕日サン以外の二人だ。
「何で!?何でぇ!?」
「そりゃ、あんまりやで!」
「黙れ。スケジュール詰まってるのに夜中まで騒ぐ方がおかしい」
 厳しいけれど最もなリーダーの一言に八雲くんは渋々納得したようだけど、引かなかったのは星夜くんだった。
「最近厳しいわ、夕日!俺は今日は飲まんとやってられんのや!だって、伊佐っちが伊佐っちが!!」
「お前の恋人の話なんて聞いている暇は無いんだ。ソラに迷惑かけるなよ。ソラはプロモ以外にも仕事あるんだからな」
 夕日サンの言うとおり俺にはさっき言われた、北海道に居る間CM撮りがある。新商品炭酸飲料のCMで、ポスターは東京で撮影済み。
あのポスターのCMかー、なんて思いながら高原さんの説明を思い出す。共演者がいるって言ってたけど、誰なんだろ・・・・・・。
「殺生なぁぁぁ」
 しくしく泣きまねをする星夜くんの姿ももう見慣れてしまった。
「は、話くらいなら聞いてもいいから、部屋に戻ろうよ」
 話くらいなら、まぁいいか。
 そう思いながら星夜くんの腕を引っ張ると、八雲くんと夕日サンに物凄い目で見られる。
 ?なんで?
「や、止めとけ!ソラ!!」
「そーだよ、ソラぁ。どうしちゃったの?星夜の恋人の愚痴は聞き飽きたーって前から言ってたじゃん」
 うああああ、し、知るかぁぁぁ!
 不思議そうに見てくる八雲くんに密かに冷や汗を流しつつ、俺はフォローを精一杯考える。
「えーと、えーと、ホラ、たまには良いかなって」
「ソラー!!」
 俺のフォロ−に感激した星夜くんががばっと抱きついてくる。
「優しいヤツやったんやなぁ〜〜。前までは話かける度に殴りよってきたんに」
「・・・・・・」
 確かに、空だったら惚気しか言わない相手に話しかけられたら殴りつけていただろうけど・・・。暴力的すぎるよ、空・・・・・・。
「さ、いこか、ソラ〜〜」
「あ、お、おやすみなさいー」
 上機嫌になった星夜くんに手を引かれて慌てて八雲くんと夕日サンに俺は手を振った。
 そんな俺たちを見て八雲くんが一言
「・・・・・・夕日、部屋割り間違えたんじゃない?」
「俺も今そう思ったところだ・・・・・・」


 はぁ、と夕日はため息を付きながら部屋に戻っていく星夜とソラを見送った。
 その横顔がいつもより疲れているように見えるのはきっと気のせいじゃない。
「いいの?ゆーひ」
「あんまり良くないだろ。後で部屋に様子見にいかないと・・・・・・」
「じゃなくて、GOTHの」
 八雲の言いたいことを察した夕日はもう一度ため息を吐く。
「何でアイツ等がこっちに来ていたんだ」
「高原さんが今日のクイズの事言わなかったのは、きっと彼の事があったからだよね」
 要らない配慮に夕日はがっくりと肩を落とす。
 彼が居ると自分が知ったら絶対に出演を拒否すると思ったのだろう。当たっているけど。
「なー、夕日」
「何だよ」
「さっきチラッと聞いたんだけど、ソラとCM撮る人、彼だって」
「・・・・・・・え?」


 ・・・・・・俺は、この部屋割りをした人を恨む。

 星夜くんのマシンガントークは1時間以上続き、お酒も入ってたから大分ノッてたんだと思うけど。
 話の内容は全部例の恋人の話。
 ああ、空が殴りたくなる気持ちも解からないでもないよ・・・・・・。
「伊佐っちとはな、2年前のドラマで知り合ってん」
「はぁ・・・・・・」
「ほら、あの子美人さんやろー?もう一目惚れで」
「はぁ・・・・・・」
「すっかり尻にしかれとるけどそれもまた愛やで」
「はぁ・・・・・・」

 空・・・・・・助けろ!!

 もう命令形だ。

「星夜、そろそろ寝よう。明日の仕事にひびく」
「あー、せやなぁ・・・・・・最近ソラなんかイイコちゃんやな?」
ギクリ。
欠伸をしながらの星夜くんの言葉には思わず笑顔を引き攣らせる。
「そ、そうかな?気のせいじゃないか?」
あはーあはーあはー・・・・・・。
笑って誤魔化しつつ星夜くんをベッドに向かわせたけれど、背を俺に押されながらも彼は何かを考えている。
ヤバイヤバイ、早く寝かしつけないと・・・・・・って俺どこの母親だ。
「あー、わかったでー」
くるっと俺の方を向いた星夜くんはにやにやと笑って顔を近づけてきた。う、酒臭い。
「わ、わかったって、何が?」
まさか、俺がソラじゃないってバレたんじゃ・・・・・・いやいや、まさか・・・・・・。
そんな俺の心配は思いっきり杞憂だった。
「ズバリ、ソラぁ、お前恋しとるんとちゃう?」
「・・・・・・・は?」
自信満々にでかい声で言われた事に、一瞬頭の中が真っ白になった。
恋?は?恋って、鯉?
茫然としている俺の態度を正解と思ったのか、星夜くんはベッドにダイブしながら「そおかー」と納得していた。
いや、納得するなよ!!
「ちょ、待て星夜!誤解だ、誤解!!」
「今更否定しても遅いでー。そかそか、あのソラがとおとお恋ねぇー。で、相手は誰や?お兄さんに相談してみぃ?」
違うのに・・・・・・。
「好きな相手が出来たから最近大人しいんやなぁ、可愛いトコあるやん」
がしっと肩を掴まれ、何だか酔いにまかせて踊り始めそうだった、から
「星夜・・・・・・いい加減にしないと怒るぞ?」
にっこりと怒りの笑顔を向けたら、星夜くんの表情が凍りつき、大人しくベッドに寝転がってくれた。
昔からこの笑顔が怖いと空にも言われているから、星夜くんにも試してみたけれど案外いけるもんだな。
「ああ・・・・・・伊佐っち、北の大地は人の心も寒くさせるんやなぁ・・・・・・伊佐っちおらんだけでベッドが寒い・・・・・・」
・・・・・・な、なんかちょっとその台詞恥ずかしいんですけど。
にしても、すっごいベタ惚れなんだなぁ、星夜くん。
「・・・・・・星夜くん」
「なん?」
「好きって、どんな感じ?」
実は俺、あんまり恋愛事に関わった事無いんだよなー。
恋愛ドラマもあんまり観ないし。空が出るドラマも恋愛が主流のヤツって少ないからな。
ここまで誰かにベタ惚れっていう友人も、居ないし。蘇芳なんて恋愛事興味なさそうだもんなぁ。
星夜くんは隣りのベッドに腰掛けた俺を振り返り、なにやらしばらく考え込んで
「せやなぁ・・・・・・一緒におると、なーんかこう、心が暖かく、な」
自分の心臓部分を手で押さえて、彼はちょっと不思議そうに話を続けた。
「笑っとる顔観るとずっとそれ観ていたい、辛そうな顔観とると慰めたい・・・・・・感情を共有したいんかなぁ。ずっと隣りにおって欲しいとか思うし、
一緒におると幸せやで〜〜」
でれっと表情が崩れた星夜くんの様子に、何で性格を隠さないといけないのか何となく解かった気がした。
「ソラにもいつかそんな相手が出来るとええな」
でも、やっぱり根本的にはかなり良い人なのだと、人懐こい笑みを見て思う。
「俺にはもう居るけどなぁー」
その笑みがでれっとしたモノになった時、思った。
・・・・・・もうちょっと格好つける人だったら、もっと良いんだけどな。
ため息を吐きながら時計を見ると12時ちょっとすぎ。
普段は勉強中な時間だからまだ眠気は襲ってこない。星夜くんも何だかんだで普段は起きている時間だろうけど、何か今は必死に寝よう
としているから、ま、いっか。
そういや、俺北海道って初めてなんだよなー・・・・・・。
昼間は仕事で拘束されちゃうだろうし・・・・・・。そういや、CM撮りって初めてなんだけど、大丈夫かな。台本も読んだし、台詞も覚えたし、
多分何とかなると思うけど・・・・・・。
ってあー、余計な事考えるなよ、俺。眠れなくなるじゃん!
もう一度時計を見ると、一分くらいしか経ってない。
早く朝になって欲しいような、欲しくないような。
早く寝ないといけない、というのは解かるけどこのままベッドに潜り込んでいるだけじゃ、良い眠りにつけないことは予想出来た。
それと、後は好奇心で。
男ってのは常に冒険心の塊なんだ、なんて。確か空が言ってたんだっけな。
二千円しか入っていない財布を片手に、俺は部屋から抜け出した。

夜中のホテルは明かりがついているけど人気がない。
外出ても大丈夫かな?バレたら高原さんあたりに怒られそうだけど。
まぁ、見つからなければ平気だけどな。
「・・・・・・ソラ?」
と、思いながらエレベーターホールについたら、夕日サンがそこに居た。
さっそく見つかってしまった・・・・・・。
「ゆ、夕日・・・・・・」
エレベーターホールに一歩足を入れた俺の姿を捉えて彼は訝しげに眉を寄せる。
「こんな時間にどこに行く気だ?」
・・・・・うーあー、怒られる。
「夕日こそ・・・・・」
「俺は高原さんと打ち合わせが終わって帰ってきたところだ」
い、忙しいんだね、さすがリーダー!!
ちぇ、北海道の真夜中の冒険はここで打ち止めか。
「で、ソラ?」
夕日サンの厳しい声にもう俺の目的は達せないだろう事を予測して、思わずがっくりと肩を落としてしまう。
「ちょっと、眠れなかったから散歩に行こうかなって」
嘘じゃない。嘘じゃないぞ。
「散歩・・・・・・か」
怒られるかと思ったら夕日サンは何か思案するようにちょっとの間視線を宙に漂わせてから、エレベーターのボタンを押す。
矢印が下になっているボタンがオレンジ色に点滅した。
・・・・・・って。
「一人は色々と危ないけど、保護者同伴なら許可しよう」
そう言って笑う夕日サンは、何だかかなり格好良く見えた。


「わー、星凄い・・・・・・」
ホテルの外に出た瞬間にプラネタリウムでしか見た事のない星空に迎えられ、思わず感嘆のため息を吐いてしまう。
東京じゃこんな星にお眼にかかれないもんなぁー・・・・・・。
「少しだけだからな」
「はーい」
保護者さんの注意に返事をしながら星を眺める。
空が北海道に来るの楽しみにしてた理由も解かるなぁ・・・・・・。
「オーストラリアの星も凄かったけどな」
夕日サンも空を見上げながらぽつりと呟いた。
「オーストラリア?行ったのか?」
流石芸能人。俺なんて本州から出た事無いのに。
「・・・・・・行ったろ。去年、撮影で」
・・・・・・・あ。
そうだ、空も芸能人だ・・・・・・。
夕日サンの指摘に、慌てて俺は笑顔を浮かべて「そうだっけ?」と言うしかなく。
知らないよ、知らないよ!!空のスケジュールなんて!
「昼間のクイズは凄かったのに、意外と物忘れ激しいんだな」
夕日サンは苦笑しながら俺にとって都合のいい解釈をしてくれる。
ひ、一安心だな。
ホテルが山の麓にあるのは、撮影場所がこの山の中だからだとか。
おかげで街のネオンに消されないで満天の星空を見上げられている。
前を歩く夕日サンについていくと、高台になっている公園みたいなところについた。
さわりとひんやりとした風が吹くと、どこからか淡い草の匂いが鼻腔をくすぐった。
「ソラ、こっちだ」
手招きされて行くと公園のど真ん中にある日時計みたいなモノに夕日サンは腰掛ける。
まぁ、他にめぼしい椅子がないから、ついでに人も居ないし・・・・・・。
俺もその横に座ってゆっくりと星を見上げることにした。
「疲れてないのか、お前」
「へ?あ、別に平気だけど・・・・・・」
夕日サンに話しかけられて少しドキドキしながら答えていた。さっきのオーストラリアみたいに解からない事聞かれたらどうしよう。
「そうか。若いヤツは良いな。俺なんかもう歳なのか疲れが次の日に残る」
俺の心配を余所に彼は欠伸をして、眼を擦っていた。
あー・・・・・・。
「ごめん、俺が散歩なんて言ったから眠いのに付いて来てくれたのか?」
そうだよな、夕日サン忙しいのに・・・・・・。
恐る恐る聞いた俺の頭を彼は一度撫でる。
「お前を保護するのは俺の役目だ」
「保護って・・・・・・俺そこまでガキ?」
「夜中にほいほい出かけようと考えるあたりは」
う。
確かに、自分の身の危険をかえりみないバカな行動だったかも・・・・・・。
空だったら多分部屋で大人しく寝てただろうな、と何となく思った。
小さい頃から何故か俺はそういう面に関してよく空に怒られたから。
陸は自分の事を良く解かっていない、と委員会で遅くなった日の夜ひたすらお説教をくらった。
海外で仕事をしている父さんよりきっと空に怒られた回数の方が多いな、俺。
・・・・・・ソラは大人だ。きっと、俺よりずっと。
芸能界という荒波を乗り越えてきたほどには、俺よりずっと経験豊富で、そういう面での頭はきっと良い。
その証拠に、彼より勉強してきたはずの俺はこの世界ではかなり無力だ。
ああ・・・・・・何かヘコむな・・・・・・。
俺が、もうちょっと上手く立ち回りとか出来たらきっと渡貫さんにばれたり、空に無理させたりとかそんなこと無かったかもしれないのに。
「何だ、別に俺は怒ってるわけじゃないぞ?」
俺が少し沈んだのは自分の言葉の所為だと思ったのか夕日サンが少し慌ててフォローを入れてくれる。
「散歩は、アレだ、今日のあのクイズのご褒美だ」
「へ・・・・・・?」
「お前のおかげで俺たちは無駄金出さなくてすんだわけだし、な?」
よしよし、と頭を撫でられちょこっと気分が上昇する。・・・・・・俺って、意外とゲンキン?
「21万のご褒美にしては安いか?」
目線を上げた俺に夕日サンはそんな事を聞いて来たけど、俺は首を横に振った。そりゃあもう、傍から見たらバカみたいな程一生懸命に。
そんな俺の様子を見て彼は笑ってまた頭を撫でてくれた。
何か、夕日サンってホント良い人だよな・・・・・・。
一緒にいるとなーんかこう、心が暖かくなるしー。
って、アレ?
何か、今思ったのとまんま同じ台詞、誰か言ってなかったか?
「じゃあ、今度休み出来たらオーストラリアにでも行くか」
「え?」
星を眺めながら夕日サンは何だかスケールのでかい話を持ちかけてきた。
「21万分のご褒美。忘れたんだろ?オーストラリアの星空。南十字星、見せてやるよ」
「に、にじゅういちまんで行けるの・・・・・・?」
「行けるだろ、多分?まぁ、足りなかったらその時はおにーさんに任せなさい」
行きたい、と言いたいところだけど。
ここで行きたいって言っても、どうせ行く事になるのは空だから。
そう思うとちょっと、というかかなり残念で。
「別にいいよ、そんなの・・・・・・」
「遠慮しなくていいんだぞ?」
「別にしてないって。・・・・・・あの、それより」
「ん?」
北海道初日だけど、入れ替わり期間は折り返し地点に来ている。
「・・・・・・俺、役に立ってる・・・か、な?」
この一ヶ月とちょっとの間、空が得意とする歌は歌ってないし、演技の仕事だって入れてない。
ただ居るだけの俺って、役に立ってんのかな、とか思ったり。
空との力の差を見せ付けられまくりだし。
つか、俺夕日サンに愚痴言いまくりな・・・気が。
「・・・・・・当たり前だろ。何言ってんだよ。お前は俺達に必要な人間だって」
でも苦笑する夕日サンにぐしゃ、と少し乱暴に頭を撫でられて、ほっとした。
「そ、か」
「そうそ。今日だってクイズ頑張ったじゃないか」
「うん」
勉強してて、よかった。
今まで勉強してても自分の為にはなったけど、誰かの為になったって思った事は一度も無かったから、何か嬉しい。
そうだよな、空じゃ無理だったろうしな、なんて。
ゴメン空、と心の中で謝っていてもきっと顔は笑ってた。
「ありがと、夕日サン」
よっしゃ、明日も頑張ろう。
っていうか、もう今日だ。
12時過ぎている事に気が付いて、段々眠くなってきている事にも気が付いて。そろそろ帰ったほうがいいだろな。
「よし、芸能人は笑顔が基本だぞ。その調子でCMも頑張れ」
夕日サンも、俺とは全然違う洗練された笑顔で立ち上がる。
この人の笑い方が好きだ、なんか、ずっと観ていたいなーって思・・・・・・。
アレ?
さっきも同じ事を思ったけど。
何だか、どこかで誰かが言っていた事と同じ事を思って居るような気が、する。
・・・・・・あれぇ?
結局、誰がどういう意味でその台詞を言っていたのか思い出すことが出来ず、俺はホテルの廊下で夕日サンと別れてベッドに潜り込んだ。
そのうち、思い出すだろうから、いっか。



next

TOP


やっぱり一波乱無いとダメですよねぇ。