「甲賀?そういえば、姿見えなくなったなぁ」
大部屋でごろごろしていた正紀の言葉に、翔は内心呟いた。マジかよ、と。
克己は本気で翔の言葉を鵜呑みにしたらしい。そんなにあっさり他人の言葉で動くなよ、と思うが、もしかして俺の言葉だから動いたのか?と思うと何だか絶対に乗り込まないといけない衝動に駆られた。
だが、彼の居場所が解からないのだ。この船は限られた空間だが、広い。
「お困りか?」
「佐川?」
きょろりと廊下を見回した翔に声をかけてきたのは、統吾だった。彼なら、何か知っているだろうかと口を開こうとした時、目の前にメモ用紙を差し出された。
「……何これ」
「人魚姫の居場所」
「んなもん要らねぇよ」
御伽噺のお姫様の名前を出した彼に眉間を寄せて見せたが、統吾は首を横に振り、そのメモ用紙を翔の手に握らせた。
「岩山敦也のあだ名だよ、人魚姫。こいつ、いっつも男とやる時はここに連れ込んでるから。シャワー付いてる部屋だしな」
「……ってか人魚姫?」
その安易なネーミングに翔が眉間を寄せると、統吾も肩を竦めた。
「アホだろ。性少年の発想なんてそんなもんだ」
「突っ込みどころ満載だけど、急いでるから後でな。ありがと」
「おーよ」
統吾に軽く手を振り、翔はそのメモ通りの場所へと急いだ。そんな背を見送り、統吾は軽く息を吐く。
「日向が変なヤツで助かった……」
そんな失礼な呟きを背後で呟かれているとは知らずに、翔はとにかく急いでいた。流石に、最中の最中に出くわすのは遠慮したいところだ。
ついた場所は、人気があまりない船室の一つだ。扉をノックしても返事は無いが、ノブを回してみれば鍵がかかっていた。中に人がいるのは確実だ。
しかし、ここで問題なのはこの扉が蹴ったところで蹴破れるような扉ではないことだろう。ここは一つ、映画のヒーローのように蹴破って格好良く登場と行きたいところだったが、流石にこれは無理だ。
鍵も内側からかけるタイプで、鍵穴も無かった。ピンで開ける芸当が出来るわけではないが、僅かな可能性も消滅する。
と、なると。
翔はきょろりと天井を見回し、目的のものを見つけ、今度は廊下の向こう側の様子を伺った。人に見られると厄介なことになりかねない。気配がないのを確認し、壁を這っていたケーブル管やらパイプ管に足をかけ、素早く昇り始めた。
コンコン、と軽いノックが聞こえ、それに顔を上げようとした克己を岩山は制止した。
「見回りの時間なんだ。大丈夫、野暮なことはしないよ」
ここがどういう場所であるか、海の生徒なら大方知っているのだ。何度かノブを回した音に、きっとここがどんな場所か知らない人間が来たのだと岩山は思う。
しかし、思ったよりあっさりと落ちたな。
昨日はあんなに頑なに拒否をした相手が、今日も駄目元で誘ったらあっさりと頷いた。嬉しい誤算に、岩山は御満悦だった。
矢張り、僕の魅力には誰も抗えないということだね、と妙な自信をつけて、今日の相手のシャツの下に手を入れた。陸の人間を相手にするのは初めてだ。磯貝は今回の演習が始まってから何人か相手にしたそうだが、岩山はあまりそんな気にはならなかった。というのも、陸は土臭いやら野蛮やらそんな噂しか聞いたことがないからだ。
しかし、克己と一日中共に居て、野蛮やら土臭いやら、そんなイメージは払拭されていた。彼なら体を任せても良いか、と思える程度には。それに、昨晩彼に叱られたことが妙に心地良かったのを思い出し、岩山は目を細める。そんな風に言ってくれたのは、彼が始めてだった。
キスも、悔しい程に巧い。キスだけで体が熱くなるのは磯貝以外にいなかった。
彼は、当たりだ。
今夜は一晩楽しめそうだとベッドの上に転がされてニヤリと笑ったその時、克己の視線が上がる。
「……どうしたの?」
何も無い天井を見上げた彼に、岩山が小さな声で尋ねれば、克己は身を離し、肩を竦めた。
「いや、別に」
「だったら早くしようよ。僕もう我慢出来な」
岩山の甘い声を掻き消すように、その時金属の板が一枚、天井から落ち激しい音を立て、埃を辺りに撒き散らした。
そんな事はこの部屋を使っていて一度も無かった。何事かと慌てて身を起した岩山とは対照的に、克己は冷静だ。ただじっと、その板……ではなく良く見たら通気口のフタだった。それがあった場所を見上げている。
「よっ、と!」
そして、そんな軽い声と僅かな埃とともに降りてきたのは、岩山も見覚えのある顔だ。
パンパンと手に付いた埃を払い、翔は顔を上げる。二人共まだ服を着ていたことに密かに安堵し、それでもそれを顔には出さず、口角を上げた。
「お邪魔かな?」
にやりと勝気に笑うその顔を初めて見た時は特に何も思わなかったが、今は別だ。激しい怒りに岩山は瞬時に叫んでいた。
「邪魔に決まってるだろ!何なんだ、お前!」
「あんたが今一緒に寝てる馬鹿の親友だ」
あまりにも堂々と答えられてしまい、岩山は唖然としてしまった。
「親友?友達が何でこんな……つか、邪魔すんなよ、友達程度が!つか汚い!陸ってマジ土臭い!」
通気口を渡ってきた為に埃だらけになっていた翔に、岩山は盛大に眉を顰めて、口元を片手で覆う。埃と共に舞い降りた彼のおかげで、この部屋も埃っぽくなってしまっていた。
確かに陸で土ぼこりの中での戦闘に慣れてしまっていた翔や克己にとっては、この程度の塵は気にかけるほどでもない。しかし、土臭い呼ばわりには翔も眉を上げた。
「友達じゃなくて親友だ!つか、この埃はあんたのところの埃だっての!そっちこそ掃除しろ!」
「翔」
違う方面で争いかけた彼を、克己は静かに名を呼んだ。岩山には、翔の無粋な態度を諌めたように聞こえ、次の言葉を期待せずにはいられなかった。
「何しに来た?」
岩山としては罵倒してくれても良かったのだが、克己の声はひたすらに平静だった。しかし、怒りを堪えてるようにも聞こえ、そんな彼の腕に岩山は抱きついてみせる。それを翔は不快気に見たが、すぐに克己に視線を戻す。
「決まってるだろ、勝負を挑みに来た」
その翔の言葉に息を呑んだのは岩山の方だ。彼は自分に勝負を挑みに来たのだ。きっと、克己ともう二度と近寄るなとそんな方面の条件を引き下げて。
そうなると、あきらかに岩山の方が不利だった。岩山はあまり体術の方が得意ではない。翔はパッと見て自分と同類に見えていたが、先ほど天井から飛び降りた身のこなしは洗練されていた。
これは、不味い。
思わず眉間に皺を寄せてしまった岩山の思考を読んだのか、翔はにやりと笑った……と思いきや
「お前にな、克己!」
って、ええええー?
岩山が色々考えているのを尻目に、翔は迷うことなく克己を指差す。てっきり自分が相手として指名されるのかと思ったのに、思わぬ展開だ。しかし、翔は岩山の動揺など気付きもしない。
「嫌とは言わせないぞ、レポート用紙にもうお前の名前は書いてるんだからな!」
尻ポケットから取り出したレポート用紙には確かに克己の名前が書かれている。勿論、克己にも書いた記憶はあった。
状況も展開も読めないことに慌てたのは岩山だ。
「ちょっと待て!普通、こういう場合、勝負挑まれるのって僕じゃ」
「悪いが、あからさまに勝てる相手に勝負挑むのは人道に反する!」
「さり気無く失礼だな、あんた!」
自分の言葉を手で制した翔に憤慨した岩山の隣りで、克己が立てた膝に自分の肘を乗せ、頬杖をつく。その眼は面白げに細められていた。
「だが、翔。お前は俺に言った事がある。あからさまに勝てない相手に考えなしに突っ込んで行くのは馬鹿だとな」
克己の言葉を予想していたように翔は勝気に笑い、腕を組んだ。
「勿論、俺だって勝算のない勝負をする気はないさ」
「勝ちに来る気か?俺に」
楽しげな克己に、翔はその言い方が引っ掛かる。自分はいつだって彼に勝つつもりで戦っていた。力の差はいつも歴然としていたが。
「俺はいつだって勝ちに行ってるんだけど?まぁ良い。とりあえず、条件だ。俺が勝ったら克己はもう二度とそこの海の生徒に近づかない事」
「その程度で良いのか?」
挑戦的な克己に翔は一瞬怯んだが、すぐに持ち直した。
「じゃあ、追加してやるよ。この船に乗っている間は、お前俺の下僕な!」
「発想が単純だな」
「うるっせぇよ!お前の条件は?」
「……なら、俺が勝ったら……そうだな」
克己はしばし考えるような素振りを見せ、再び翔に視線を戻した。
「この船に乗っている間、お前が見えないところで俺が何をしようが、お前は気に止めないし、何も聞かない。お前が見えないところで起こった事を聞いても、それは忘れる。それでどうだ」
「その程度で良いのか?」
翔は先ほど自分が言われた言葉を克己に返し、予想していた友人は口角を上げた。
「じゃあ、追加させて貰おう。うちの班は篠田が怪我をして効率が下がっている。勝負が終わり次第、お前は残りの日数うちの班に来て仕事手伝え」
「……ま、良いだろ。で、肝心の勝負方法だけど、勿論いつもの殴り合いとかじゃ俺が勝てるわけがないのでー」
翔は拳を握り、それを勢いよく克己の前に突き出し、そして
「運任せでジャンケン三回勝負!」
「軽ッ!」
びしっと指を三本立てた翔に、岩山は声を上げたが、克己は軽く片眉を上げただけだ。もう少し克己にもリアクションが欲しかったんだけど、と思いつつ翔はその手を腰に当てた。
「っつーのは冗談だよ。俺だってちゃんと克己と勝負らしい勝負してぇもん。でもジャンケンはするぞ」
拳を軽く振り、適当に三回勝負をすれば、翔の勝ちだった。
「何をする気だ?」
理由の解からないじゃんけんをさせられた克己の問いに、翔はにんまりと笑ってみせた。
「鬼ごっこ」
「鬼ごっこ?」
「明日の朝6時の朝礼後から、翌日の0時まで。この艦全域を使って、だ。鬼ごっこっていうか、かくれんぼに近いけど……例え姿を見つけても、捕まえないと駄目だ。勿論、鬼は今負けたお前な。逃げるのは俺」
ルールを聞き終えた克己はしばし逡巡し、ゲームを理解をしたのか少し眉間を寄せる。
「……逃げる方が有利じゃないのか、これは」
「勝算の無い勝負はしないって言ったよな、俺。お前には一応拒否権はあるぞ」
にこーっと笑う翔に、克己は初めて分の悪い顔を見せるが、拒否はしないつもりのようだ。翔もこの負けず嫌いの友人が、自分に分の悪いゲームを投げ出すような性格ではないことぐらい理解している。
「時間内にお前が俺を捕まえられたらお前の勝ち。0時まで逃げ切れたら、俺の勝ちだ。一応ルールも決めておこう。俺は、どんな部屋に入っても鍵はかけない。朝食・昼食・夕食時間は休戦タイムだ」
「逃げる場所を時間ごとに定めるのはどうだ」
克己は身を起こし、壁にかけられていたこの艦の地図を指で真ん中から横に二分した。
「上をA、下をBとする。午前中6時間はA、午後6時間はB、夜の最後の6時間はまたAだ。立ち入り禁止区域には入らない」
克己の言う立ち入り禁止区域とは、陸の生徒である自分達が入ってはいけないと事前に注意されていた場所だ。機関室や船長室、操縦室や一部倉庫などが含まれる。
「ん……まぁ、良いだろ。武器の使用は無し。後はお互い自由に楽しもう」
「ああ。すぐに捕まらないでくれるなよ」
「そっちこそへばるなよ」
軽く克己の肩を叩き、翔はにやりと笑んだ。
そんな二人の様子に、岩山はすでに自分の存在が薄れてきている事に気付き、焦る。これでは、折角の計画も台無しだ。計画と言っても、ただ磯貝に甲賀克己を誘惑しろ、と言われただけだが。磯貝の狙いは日向翔で、彼には仲が良い友人がいるから、その友人が邪魔で満足に楽しめないだろうから、甲賀克己はお前に任せると言われたのだ。自分は結構良いところまで行ったのに、一体磯貝は何をやっているのだろう。
しかし、ここで引くのも岩山のなけなしのプライドが許さなかった。
「ねぇ、克己……」
勝負は明日からなら、今日は楽しめる。そう誘おうとしたが、岩山の作られた甘い声を見咎め、差し伸べられた白い手から克己を離したのは翔だった。
宙を切った自分の手に驚いた岩山の大きな目は、確かに整っているけれど、あまり好きになれない形だと翔は思う。そのどこか媚びるような視線が、今の自分にとっては不快だった。
「おい、馴れ馴れしく呼ぶなよ。こいつを誰だと思ってんだ。こいつはな、陸上士官科一年の中でも屈指の成績を誇る我らが甲賀克己様なんだよ。こいつを選んだ目は評価してもいいけど、高望みは止めとけ。泡になるぞ、“人魚姫”」
人魚姫、と言われた瞬間に岩山の眉間に皺が寄り、翔の胸に僅かに罪悪感が生まれた。やはり、本人はあまり気に入っていないあだ名だったようだ。その所為か、岩山はすぐに噛み付いてくる。
「っていうか、何なんだよ。親友なんかが何で邪魔してくるわけ?あんた、もしかして克己の事好きだったりすんの?」
「好きに決まってんだろ、大切な友達だ!」
「そうじゃないよ!なんなのマジで!!」
痛いところを突けたかと思ったのだが、翔の堂々とした返事に、思わず岩山は頭を掻き毟っていた。友人も少ない岩山にとっては“大切”や“友達”という単語は一番信用出来ないもので、吐き気を感じるほど不快なものだった。そんな言葉を口に出来る翔の存在はそれ以上に不愉快だ。
翔はちらりと克己を見てため息を吐く。
「友達が人道から外れそうになってるんだ、止めるのが友情だろ」
「人道って……あんたとことん失礼だな!」
岩山の怒りも振り切れ、ベッドから飛び降りた彼は翔を指さした。その行動を翔はただじっと見ている。
「僕は、日向翔、あんたに勝負を挑む!」
来た。
こんな展開を翔もどこかで予感していた。翔にとっても、恋愛だの一晩の相手だのそんな面倒な話よりも、こうしてぶつかって来てくれた方が楽だ。むしろ、こういう展開を望んでいた面もある。
「僕が勝ったら、あんたは今回の研修が終わっても、この船に残れ。僕が克己と一緒に船を下りる」
「おい」
その条件に、克己が低い声で諌めた。それはつまり、翔に海へ移籍しろと言っているのだ。そんな事が実際出来るのかと思う程に馬鹿げた内容だが、この勝負は生徒会の了承を得て行われている。双方の生徒会は認めるかも知れない。
しかし、克己の制止を翔は軽く手を上げて止めた。
「解かった。その条件を呑むよ。んじゃ、俺が勝ったら君はもう二度と好きな相手以外とこんな事はしない。ってのは」
「……はぁ?何であんた何かに」
「それは俺だって同じ事だ。勝負方法は?」
鼻で笑いつつ文句を言いそうだった彼をはね付け、翔は話を進める。それに岩山も一度口を噤み、その美形顔を挑戦的な笑みに変えた。
「……先に、負けを認めた方が負け。シンプルでいいだろ」
「解かった」
その内容に翔は僅かに眉間を寄せた。細かい内容が決められていないことは危険だが、命に関わる事はあまり無いだろうと思い頷く。この口が負けを告げなければ良いのだ。
翔が頷いたのに、岩山は微笑み、服を整えて部屋から出て行く。
「じゃあ、僕は色々と準備しないといけないから。明日が楽しみだよ、日向くん」
重い扉が音を立てて閉まり、ようやく翔は一息吐くことが出来た。
「勝てるのか」
「負けるつもりは無いぞ。あの子にも克己にも」
横から聞こえた声に肩を竦めて見せたが、すぐにその挑発的な態度を改めた。克己がいつも通りの態度だったからだ。
「悪かったな、克己」
「何が」
「……色々だよ」
明確な答えは返さず、解釈は彼に任せることにした。もう好きなようにとってくれて構わない。前の時の軽い諍いの事、折角のひと時を邪魔した事、いっそこの船に乗る前の事でも良かった。
ベッドに腰掛けるとまだ彼らの体温で生暖かい。今更ながら、自分こそ非常識な行動をとってしまったと思う。だが、あの時本当に強く思ったのだ、絶対に行かなければ後で後悔すると。
くぁ、と欠伸をした瞬間に眠くなってきた。時計を見れば、もう0時を過ぎている。
「眠い」
「……俺も眠い」
珍しく同意した克己に、そういえば彼も寝不足だと言っていたのを思い出し、眠い目を擦る。そして岩山が出て行った扉に向かい、鍵を閉めた。
「もう今日はここで寝る。俺も疲れた。お前も大部屋じゃ休めないんだろ、ここで寝てけよ」
ベッドの端に皺になっていた毛布を広げ、翔は床に座り込む。そんな彼の行動を、克己はじっと見ていた。その視線に、翔は首を傾げる。
「何だよ?ベッドは譲るぞ」
昼間のことの詫びのつもりだった。翔も昨晩はよく眠れなかったが、今日は眠れそうだと予感していたからでもある。べし、とベッドを軽く叩いてそれを示してやるが、克己はそれに目を細める。
「……ああ、悪いな。だが、お前はもう少し警戒ってものをした方が良い」
自分が男を抱こうとしていたこの部屋で寝ようと誘う翔は、一般的に見ても警戒心が薄すぎる、と克己は注意したつもりだったが
「え?」
警戒?誰に?と首を傾げた翔はすっかり克己のことを信頼しきっている様子だった。
「……解からないなら、良い」
「何だよー……」
首を横に振った克己に、翔はさっきの自分の行動を諌められたのだと思った。確かに、何を考えているのか解からない岩山の勝負に、易々と乗ってしまったのは軽率だったかもしれない。だが、他に方法は無かった。
しかし、克己にそう言われると何だか不安になる。
床の上で胡坐をかき、しばし考え込んでしまった。確かに、自分の負けた場合をあまり考えずに返事をしてしまったかもしれない。
「……な、俺が海の生徒になっても友達?」
ベッドに腰掛けていた克己は、その問いに呆れたようにため息を吐く。翔の不安に呆れたのか、それとも例の勝負に乗った事を呆れたのかは解からないが。
「勝て、お前は」
とりあえず自分の勝利を望んでくれている親友に、翔は自分の口元が緩むのが解かった。
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