投票ありがとうございました!結果は正紀攻3票、いずる攻36票、リバ7票、親友止まり10票、いずる×翔3票でした!
やぁ!みんな元気?俺の名前は篠田正紀。ピッチピチの16歳だ!聞いてくれよ、俺の一番の友人、つまりは親友の矢吹いずるくんは今日も俺達の部屋で、電気を消して俺が苦手なホラー映画鑑賞なんてことを始めちまった!俺様超ピンチだぜ!
なんて、一人虚しく脳内状況報告をやってしまうくらいに、俺は恐怖に震えていた。その恐怖を紛らわせる為に色々と努力をしてみたものの、目の前で光り輝く画面と響く女性の悲鳴に、俺は一人毛布を被り、膝を抱えていた。その隣りには平然と好きな甘いものと酒を口に運ぶいずるの姿がある。コイツは俺の怯えっぷりに気付く事無く、画面に食い入るように魅入っていた。
俺の昔馴染みで親友であるこの矢吹いずるは、何故かこの類のホラーが大好きで、俺、篠田正紀はこの類のホラーが物凄く苦手だった。
ホラーと言っても、タイプは様々だと最近知った。知らなくても良い事だろうに、知ってしまった。正体不明の相手、それは時に人だったり時に怪物だったりと姿は様々だが、それに次々と人が殺されていくスプラッター系と、そういった過激な表現は無いが、じわじわと攻めるように展開していくホラー。スプラッター系の方がまだマシだが、突然現れる殺人鬼は正直怖い。グロいのは平気だ、だからSFホラーの類は一番平気だった。正体が宇宙人なら、何か平気だ。何で、という突っ込みは不要だ。俺だって何でなのか解からない。
けれど、俺が一番苦手としているもの、それはジャパニーズホラーのような……なんかこう、ジメジメっとしているヤツだった。鏡の端にいないはずの人が映りこんでたりとか、車のフロントガラスに手形が付いていたりとか、首に絞められた痕が残っているとか……そんなネタを見せられたら、俺はしばらく鏡を覗けないし、車にも乗れない。取り合えず、最近騒がれている都市伝説という辺りも大方苦手な部類に入る。例えば、ムラサキカガミとか……うぉっと!しまったぁぁぁ!後4年でこれ忘れなきゃいけないのに、何でよりによってこれ思い出すかな、俺!
後は、「次はお前だよ」とか「お前だ!」とか、何かラストに台詞が残るのもいただけない……。最高にヤバイのは、話し終わった後に「この話を聞いた人は〜」と続くヤツだ。呪われるとか何かしないと不幸になるとか、そういう類の。そう続けられると、話し手にいっそ殺意が湧く。話す前に言えぇえぇ!と一度、首元引っ掴んで盛大に揺らしてやったもんだ。気持ち悪くなって吐きそうになるまで揺らしてやった所為か、それからは俺にその手の話はしなくなった。ああ、勿論そんな話をしてきたのは今隣りで瞬きもしないで画面を見ている馬鹿親友なわけだけど。でも、コイツも良いところはある。あまりにも取り乱した俺に「……大丈夫だよ正紀、こんな話ネットにも流れているし、今まで数百、いや数千もの人が聞いてきたはずだ。そんな数相手に一人の霊が何か出来ると思うか?」と一言。
なるほど、さすが俺の親友、頭が良い。
そんなこんなで落ち着いた俺にいずるは苦笑していたが……なんかちょっと俺を馬鹿にしたような笑いだったのは気の所為だと思いたい。
で、今日観ているのはどこから入手してきたのか海外ホラー映画だった。海外モノは基本スプラッタームービーだからとちょっと安堵していたが、これが意外と正統派ホラーで俺はさっきから震えが止まらない。海外もどうやらホラーの描き方を勉強したらしいな……ヒィ!っと、悪い……まさかそこで女が鏡から出てくるとは思わなくて。
「……そんなに怯えるなら見なきゃ良いのに」
今俺がびくりと体を揺らしたのに気付いたのか、ずっと画面を見ていたいずるが呆れたように呟いた。
「そう思うならこの部屋で見るなよ……」
そうだ、この部屋は俺の部屋でもあるんだ。見なきゃ良いって言っても、電気まで消されたら観ないわけにもいかないだろうが!
「じゃあ、他にどこで見ろって言うんだ?」
俺の至極当然な言葉に、いずるも至極当然の返事をした。確かに、他に見る部屋はないけど、少しくらい俺に気遣いってヤツをしてくれても……。
コイツの机の上に某有名殺人鬼の仮面が飾ってある辺り、俺への気遣いが全然されていないのは一目瞭然だ。
「くっそ、お前今度は洋物でも違う洋物持って来いよ、18禁でも違う意味での発禁物持って来い!」
そうだ、健全な青少年ならばここはAV観賞が普通だ。しかし、いずるの方は若干嫌そうな顔になる。おい、それは青少年としてどうなんだ。
すると、何かに気付いたようにいずるは画面に視線を戻し、そこを顎で示した。
「ほら観ろよ、正紀。この女優なかなか胸でかいぞ?」
「あ?ああー、本当だ……流石、美人だなー……って止めろォォォ!ホラーの性交フラグは死亡フラグだろー!!?」
俺が騒ぐのも虚しく、女優はあっさりと服を脱ぎ捨て、相手役の男の腰に座る。そして濃厚なラブシーンに走るのは良いが、喘ぎ声はすぐ悲鳴に変わった。ああ、グロい……平気だけど、見ていて気分が良いもんでも無い。こんなん、萎えるどころかタチもしないんだが。……最近、AV観ても、何か目の前でアンアンやっている奴らがいつ殺されるか無意識のうちにハラハラしてしまい、全然腰に来ないんだ。ああ、俺ってば毒されすぎ。
そういえば、隣りにいる親友は一体何に興奮を覚えるんだ?という純粋な疑問が過ぎる。そういえば、たまにAV観ても、コイツ結構サラッとしてるんだよなぁ……。俺も安っぽいAVにはそれほど興奮を覚えない方だけど。あまりにも嘘くさいAVだと逆に冷めるんだけど、残念ながら10代の財布事情ではそういう映像しか手に入らない。
ああ、でもいずる君ってばドーテーじゃないらしいしなぁ。
不意に、前に話した事を思い出した。俺達の年代だと経験済みってヤツは仲間内でちょっと自慢してみたりとか、そういう馬鹿騒ぎを良くするもんだけど……実際、中学の時そういう話で盛り上がってた奴らもいたし。でも、この学校で親しくなったヤツとはあんまりそんな話をしないな、ということに今更気付かされた。三宅とはたまにそんな話をするけど……アイツ、大人しそうな顔して女教師喰ったとかどんだけなんだ。後は、甲賀が既に経験済みらしいが……前に吐かせたら、アイツもなかなかの戦歴の持ち主で、からかう隙も無かった。まぁ、あの顔だしな……ドーテーって顔じゃないしな……。
他の友人というと、日向とあの天才君。あの二人は……なんか経験済みだったらいっそ泣けるから聞いていない。なんだろうな、この感じ。小さな子どもを持った親の心情と言おうか……。でも前に天才にはさらりと聞いたことがあったな、お前、童貞?って。すぐに顔面に分厚い辞書の角が飛んで来たけど。痛かったけど、何だか溢れてくる涙は多分それだけじゃない。
日向の方は処女の方を心配した方が良いと思うんで、ああ、いやいや、これは過剰表現じゃない。ここは曲がりなりにも軍施設だからな、マジで注意しないとあの顔と体格じゃ喰われる。ま、甲賀が隣りに引っ付いて警戒しまくってるから大丈夫だとは思うけど。それにあれだ、日向ってあれでいてマジ強ぇんだぜ……俺投げ飛ばされたぜ……?正直、自分よりずっと体格が小さい相手に投げられちゃ、へこむってもんだ。
うん、いや、仲間の性事情の紹介は取り合えずここまでにしておこう。問題はいずるだ、いずる。
いずるの記念すべき初めてのお相手は、中2の初め辺りだったらしい。同い年相手かと思いきや、高等部のお姉さま相手だったらしい。そういえばコイツは小さい頃から年上のねーちゃん共に可愛い可愛いと可愛がられていた。その中には俺の姉貴も入る。なるほど、年上キラーは健在ってわけか。
そのおねーさまは初めてではなかったようで、俺の可愛い幼馴染は大人の色気になす術も無くぺろりと喰われちまったわけだ。
「それなりに楽しめたけどな」
いずるの締めくくりは、さらりとしたものだった。その初めて結ばれた夜の3週間後、あっさりといずるから振ったそうだ。理由は、単純だ。彼女の望みはいずる自身でなく、彼の後ろにあるもの、つまりは矢吹の名前だった。何か、行為の最中、彼女は妙にゴムをつけるのを嫌がったので、不審に思ったいずるが強く問いただせば、貴方の子どもを孕めば矢吹に入れるから、家からの命令云々の返事が来たそうだ。
それでも往生際悪く彼女は、「でも私は貴方を愛してるわ」なんてことをいけしゃあしゃあと言った。確かにそれは100年の恋も冷める。
いずるの親友である俺としては、初めてのお付き合いの相手がそんな女だったことに同情した。思わず抱き締めてやったら、意外にも抵抗されなかった。すぐに「ウザイ」とか「暑苦しい」とか、そう言いながら離れようとすると思ったのに。つーか、そういう類の突っ込み待ちだったんだけど、それが無かったことに、案外いずるがその事を引きずっていた事を知らされた。
ああ、そういえばコイツの家、離婚してるんだもんな。
その時思い出したのは、彼の家族が両親の不仲で離散していること。彼の両親は大恋愛の末に駆け落ちしたというが、その末路は離婚だった。あまりにも酷い筋書きに、“恋愛”という感情がどれほど脆いものかを、いずるは学習してしまったらしい。その関係には何も望まないと決意したから、その彼女をあっさりと切ったんだろう。
つーか……貴方の名字が好きなの!なんて言われたら俺だって引く。
その時、不意に肩に乗りかかる体重に気付いた。アレ?と思ってそこを見れば、いずるが頭を預けていた。テレビ画面はまだ血みどろだ。
「……っておい、いずる?」
「……眠い」
その呟きに友人の手元を見れば、いくつか酒の空瓶が転がっていた。ちょ、お前……しかもこれウィスキー!
「お前、酒そんなに強くねぇんだからいきなり飲むなって何度言えば……!」
そう、いずるは酒がそれほど強くない。それでも、その味は好きなようで、結構飲むんだよな。因みに俺は酒には強い。親父譲りだ。
すでに目蓋が閉じてしまっている友人を抱え上げると
「……チョコレートとウィスキーの魅惑の組み合わせは止められないんだ」
そんな遺言を残していずるは意識を飛ばした。
見れば、酒瓶と共に高そうなチョコレートの空箱がある。ああ、コイツ甘いものも好きだもんな。好きな酒と好きなチョコレート、そしてホラー映画。こいつにとっては至福のひと時だったわけだ。
「つーか、お前服脱げよ。酒で濡れてるっつーの」
どうやら俺に倒れ掛かった時に手に持っていたコップを自分の体に倒してしまったらしく、親友の服は上も下も酒臭く濡れていた。ったくしょうがねぇ、脱がせてやるよ。
ガキの頃に一緒に風呂に入ったりしてたし、特にいずるの裸体を見る事も、自分の裸体を晒す事も全く抵抗がなかった。戸惑いも無くペペッと脱がせ、でも違う服を着せるのは面倒で、裸でベッドに放り込んでやった。ま、寒い季節でもねぇから風邪ひいたりもしないだろ。
ティッシュで濡れた床を吹き、俺も寝るかと顔を上げた時、テレビ画面はすでにエンドロールになっていた。あ、コイツの介抱で全く気付かなかったけど、映画終わったのか、フーン。
本編じゃなければ怖がる事は無い。ほっとしつつ、テレビを消そうとした、その時だ。Cパート、と映画の場合言って良いのかわからないけれど、エンディングの後に更なるエンディングが待っていた。それは、まるで俺の今の状況と同じ人間……つまりは、そのエンドロールが流れ終わったテレビを消そうとしている人間を映していた。彼はこの映画を観ていたという役割の人物だろう。その彼が、テレビを消して後ろを振り返り、恐怖と驚きが混ざった顔をする。そう、そこには今まで映画の中にいた殺人鬼が立っていたのだ!
ギャアアアという悲鳴と共に血が白い壁に飛び散り、男は倒れた。そしてカメラが引き、殺人鬼がこちらを振り返り、俺を指差す。
『次はお前だ!』
吹き替えの声優の演技力に、俺は拍手したいが……そんなことを出来る状況でもなかった。
ぎぎぎ、と音が鳴るんじゃないかと思うくらいに鈍い動きで俺はすやすやと寝入ってしまったいずるを振り返る。そこでは何とも気持ち良さそうにもとい、間抜け顔で寝入っている幼馴染。ちょ、お前、お前が真面目に観てたんだろう、何肝心なところを寝ているんだ。
「ば、馬鹿起きろよいずるー!!先に寝るな、起きろー!!」
必死に揺すっても叩いても、薄情な幼馴染は目を覚ますことはなかった。
「ギャァァァァァァッ!」
どうにか寝入り、何故か酒に溺れる夢を観ていた俺を叩き起こしたのは、幼馴染の奇声だった。その真に迫った悲鳴がホラー映画の悲鳴と被り、一瞬にして意識が浮上した。
「なんだどうしたジェイソンかフレディか案山子が出たかそれともキラースノーマン!?」
次々と思い浮かんだ俺のトラウマをいずるは頭を叩いて振り払ってくれた。
「ばっか、ジェイソンフレディ案山子は良いとして、スノーマンはギャグだろうが!!アレをホラーに加えるんじゃねぇよ!」
馬鹿言うな、雪だるまが人を殺すんだぞ、それがホラーでなくてなんだってんだ!俺の中で雪だるまの使い道っていったら死体隠しぐらいだったのに!しかも死亡時刻を誤魔化せる探偵悩ませのトリックだ!
と、言ってやりたかったが、いずるの様子に思わずその言葉を飲み込んでいた。
普段は飄々として何を考えているかいまいち良く解からないと評判の幼馴染が、珍しく困惑しているようなんだ。しかも、僅かに顔が赤い。
「い、いずる……?」
眉間を寄せて俺を見たと思えば、その視線は下に向けられる。そこには、何も着ていないいずるの白い体。コイツ、日に焼けない体質なんだよなー……ってそれがどうしたんだ。
次に視線を向けられた俺の体……俺の方は結構焼けちゃう方だからなかなか良い色をしている。因みに俺も全裸だ。気付けば昨日洗濯を溜めに溜めてた所為で、着る物が無くなっちまってたんだよな。昨日あれから一人ランドリーコーナーでガラガラ洗濯機を回してきたわけだけど、乾燥機は故障中だってんで、バスルームに干したんだったな。換気扇回しておいたし、今頃は乾いてんじゃねぇのか。
ふぁ、と欠伸をしながらガシガシ頭を掻いていたら、その頭をバシリと叩かれた。
「ちょっ!何だいきなり!」
「……まず一つ、何で俺はお前と同じベッドで寝てる?」
ビシリと指を一本立てながら、いずるは聞いて来た。その指が何故か僅かに震えていることには気付いたが、何でだ?寒いのか?全裸だから?
因みに、俺がいずると寝ていたのは、怖かったからに決まってるだろーがドアホ!と叫ぶ前に、いずるは指を一本増やした。
「もう一つ。何で、俺もお前も全裸?それに……」
いずるはちらりと床に転がっている使用済みティッシュを見る。ああ、お前が零した酒を拭いたヤツだ。片付けておくの忘れてたな……。
と、そこでようやく俺は何となくだが把握した。いずるの顔が僅かに赤い理由と、それと何か体をぷるぷる震わせている理由も二日酔いで頭痛いからってだけじゃなさそうだ。色素が薄い髪の色も手伝って、お前ちょっとチワワみたいだぞいずる。
だが、成程オーケー把握した。お前、俺と一晩の過ちを犯したと思っていやがるなハッハッハ!いくら寛容な俺でもその勘違いはマジ頂けねーな!
「何だお前、昨日の記憶ねぇのか?」
にっこりと怒りの笑顔を返してやると、それはちょっと間違った対処法だったらしい、いずるはその勘違いをどうやら確信へと導いてしまったようで、本格的に茫然としやがった。長いこと幼馴染やってるから分かるが、こういう表情は珍しい部類に入る。それがちょっと愉快に思えたその瞬間、ちょっとした悪戯を閃いた。
いずるには散々ホラー映画を見せられてからかわれて来たんだ、ちょっとくらい仕返しをしても多分バチは当たらない。いや、この際見るのは良いとしよう。だが、見終わった後一人で先に寝るのはマジで頂けねぇ。
「………俺はっ」
ぐっと一瞬だけ奥歯を噛み締めたのは、勿論悔しいだとか悲しいだとかそんな感情の為じゃない。笑いを堪える為だ。歪みそうになる口元を隠す為に手でそこを覆ったのも良い演出だった。
「俺は、無理だって言ったんだ……でもお前が……」
俺の母親は結婚詐欺師だったんだけど、その母さん直伝の演技力には自信がある。御丁寧に目元に涙を浮かべてやると、ゴンッという鈍い音がした。顔を上げれば、いずるが壁に額をぶつけて撃沈している。
「……うそだろうそだろうそだろうそだろ……」
ぶつぶつと壁に向かって呟いているその背は最高に面白かった。やべー、もういい加減声出して笑って良いかな、これ。
ああ、嘘だよ、と言う前に何故かいずるが俺を振り返り、強く睨み付けてくる。あれ、何もしかしてネタバレする前に気付いた?なーんだ、つまんね……。
「違う、俺は悪くない……正紀が可愛いのが悪い!」
ブッハ!ちょ、何言い始めてんの俺の幼馴染は!思わず飲もうとしてたミネラルウォーター噴いたじゃねーか!
「ちょ、何馬鹿な事言ってんだ!」
「だって今まで俺が酔っ払って寝ることは何度もあった!なのに昨日だけこんなことになるってのはおかしいだろうが!今までと昨日の違いは映画観てたことくらい……お前があんなにガクガクしてるのが面白……可愛かったからこんなことに!」
「待てお前。可愛いってのも納得いかねぇが、その前にお前面白いって言ったなテメェ」
「……一応確認するけど、俺が上だったんだよな?」
「は?何でそんな事……」
「男としての沽券に関わる」
テメェ……。
それじゃ俺がテメェに抱かれたってシナリオになるのかよ。それは正直ゴメンだが、何か色々と腑に落ちないことが重なった所為で、俺は嘘だと言ってやる気が失せてしまった。
「……まぁ、そういうことにしてやるよ!」
舌打ちし、破れかぶれに言ったというのに、いずるの目にはその反応が俺らしく映ったらしい。どうやら本気で昨晩のことが真実だと解釈したようだ。
「そうか、ならおはようハニー」
「は?」
さらりと言われた朝のあいさつに俺は目を丸くするしかなかった。何か、気付けばいつもの様子に戻っているじゃねーか。だが、朝のあいさつに今まで頬ちゅーをつけられたことは無かった。
「……い、いずる?」
「ま、過ぎたことはしょうがない」
「お前が言うのか」
「じゃあ聞くが、正紀だったら俺が襲った程度なら抵抗すればねじ伏せられるだろ。なのに、抵抗しなかったのは何でだ?」
「へ」
……はっ!そういえば、俺とこいつの力はほぼ同等。しかも酔っ払いだったら確実に俺の方が有利だ。
ぎくりと身を竦めた俺に、いずるはにやりと笑う。
「抵抗しなかったって事は、合意の上になるぞ、正紀?俺相手に、身を任せないと殺されると思ったなんて言い訳は通用しない」
「……いや、あの……」
「そうか……俺の幼馴染はどうやら大分前から俺に恋心を抱いていたらしいな」
「あの、いずる……」
「安心しろ、責任は取る」
グッと親指を立てて言う幼馴染はものすっごい良い笑顔をしていたけど、俺は自分のしでかした事を後悔し始めていた。
「あのな、いずる」
「まぁ……俺も正紀ならまだマシだしな」
「いや、だから」
「でもそれなりに気持ちよかっただろ?」
「あ、あの、だからっ!」
「安心しろ、お前の気持ちは受け取った!」
「お願いだからネタばらしさせてくれぇぇぇぇぇ!!」
とりあえず、教訓としては、俺の幼馴染は俺より一枚も二枚も上手だから、突発的な悪戯を仕掛けるのは止めておいたほうが良いってこと、か……。
その後、つまらない嘘を吐いた罰として、13夜連続ホラー映画鑑賞を命じられた。13夜とかどんだけ縁起悪いんだ!
終
オマケ
いずる攻36票……!(゚∀゚)
なのにBL不発ですいません……orz
メッセージも有り難う御座います!受を熱望される正紀と、攻であってほしいとまで言われるいずるが何か面白かったです。
お遊び投票にお付き合いくださり、ありがとうございました!