「……持って来ちまった」
さっき外に出すなと言われたばかりなのに、四文字熟語辞典片手に翔は一人ため息を吐いた。まぁ、自分の手から離さなければ大丈夫だろう。誰も四文字熟語辞典になど興味を持つ人はいない。
薄黄色の拍子にため息をもう一つ落として、翔は廊下を歩き出した。
浮気なんて、そんなのされるような人間じゃないだろう。あんな男を恋人に持って、浮気が出来る女性がいるなら見てみたい。
そう、心の中で克己に毒づきながら。
部屋を出る寸前の少し驚いたような克己の表情を思い出し、少し眉を下げてしまう。彼の自分を卑下するような言葉には過敏に反応してしまい、そんな自分の態度は反省している。けれど
「彼女作れば良いのにな……」
持ってきた本を眺め、思わず眉を寄せていた。
昔の彼女の事を忘れられないのは分かるが、彼はまた新しい恋人を作るべきだ。彼の背負う陰がその彼女がもたらすものであるのならば尚更。
恋をすると人は変われるのだという話は良く聞く。良い方向にも、悪い方向にも。もし、あの友人を良い方向へと向かわせてくれるなら、恋人の出現は大歓迎なのだが。
不意に動いた時に自分のものではない香りを感じ、視線を下せばダークグレーのサマーセーターが目に入る。見覚えの無い服で、袖が少々長めであることから察するに、これはあの友人の服だ。そういえば、自分は女装姿のまま寝てしまったのだったと思い出し、下したままの髪を撫でた。カツラも取ってくれたらしい。わざわざ着替えさせてくれたのか。そう考えると軽い感動まで覚える。
こんな風に優しい友人だから、幸せになって欲しい。そう思う。
普通に恋人を作って、結婚をして、子どもも生まれて、という一般的な幸せを味わって欲しい。しかし、克己の子どもか、男女共に無愛想な子どもかもしれない。そんな予想に小さく笑ってしまった。
そこで、閃いた。
そうだ、こういう事こそ自分が一肌脱ぐべきなんじゃないか。
「あれ?日向も今から飯?一人?」
食堂に入ると、配膳用のトレイを持った正紀が翔の後ろにいると思った克己の姿を探したが、翔が頷いたところで一枚トレイを渡し、笑みを向けてくる。
「そっか、丁度良い。んじゃ俺と飯食おうか、我が友よ」
正紀からトレイを受け取り、翔も笑いながら頷いた。
「いーぞ……ってなんだよ、しょうが焼きは売り切れか」
メニューの札が裏返されているのを見て翔は小さく呟き、それを耳にした正紀も肩を竦める。
「肉ものは人気だからな。あー、俺も肉喰いたかった……カレーにすっかな」
時間が少し遅れると人気メニューにありつける確率は低い。特に、育ち盛りの少年達には肉類が人気だった。そういう時残っているメニューのメインは大方魚だ。嫌いではないが、テンションが下がる。
通常メニューのカレーを迷わず選んだ篠田の横で、翔は少し焦げた魚をトレイに乗せた。
「篠田も今日は夕飯遅かったんだな」
「ああ、まぁな。日向も遅かったんだな。何してたんだ?」
「……まぁ、色々?」
「そうか、俺も色々」
「だよなー……」
恐らくその“色々”は本当に“色々”なのだろうとお互い思いつつ、適当に食事を選び、二人が席についたところで、まず翔が先に口を開いた。
「俺も篠田に頼みたい事あるんだ」
どことなく力が入った台詞に正紀は珍しいと思いつつ、メニューについてきたウーロン茶を手に取る。
「何だ?」
「女の子誰か紹介してくれ!」
ブッ。
言われた瞬間思わずウーロン茶を噴出しそうになった正紀の心情を翔は知らず、思案するように宙を見上げていた。
「そうだなー良い子が良いな。浮気しなさそうな女の子!」
拳を握りながら指定してくる友人の珍しい言葉に正紀は頭がついていかない。頭がついていかなかったのは、何故か瞬時に浮かんだのは遠也と克己の無表情の顔だったからなのだが。
何で想像で友人達に威嚇されてしかもそれに恐怖を抱いているんだろう、自分は。
「いやいやいや……え、どうしたんですか、日向さん?いきなり性に目覚めちゃったんですか?」
そういえば、今日の翔の服装はいつもと違う。普段の彼の服の色は白か暖色が多かったのに、下は制服らしいが、上は珍しく黒い服だ。大人になろうと努力でも始めたのだろうかと正紀が考え始めたその時、翔は首を横に振った。
「俺のじゃないんだ、克己に紹介して欲しい」
「はぁ?」
その真剣な一言に更に驚かされた。いや、呆気に取られたという方が正しい。何故、自分が自分よりモテる克己に女性を紹介しなければいけないのか、正紀には理解出来ない。が、翔は真剣に正紀を見つめていた。その真剣さに思わず間延びした声を上げてしまう。
「あー……っと……甲賀なんて紹介しなくても寄って来てるだろ。毎日1人には告白されてるし」
正紀が遠目から見ている限り、彼に愛をぶつける女子はそれなりにいた。けれど、翔の方は初めて聞く話のようだ。
「……そうなのか?」
確かに、克己は翔の前ではそんな素振りを見せていないようだったから彼が気付けなかったのは無理はないことだと思い出し、正紀は肩を竦めた。
「そうだ。彼女だって作ろうと思えばすぐに作れるだろ、アイツなら。なのに作らないってのは、作る気がないってことで……」
「それじゃ、駄目だ」
克己が恋人を作らないのは、昔の彼女のことがあっての事だというのは知っている。そんな事を言っていたら彼は一生恋人を作らないかも知れない。それは駄目だと翔は首を横に振った。
「何か、ちょっと女の子と一緒にいればアイツもそれなりに誰か好きになると思うんだ。そこは多少強引にいかねぇと!」
拳を握り熱弁をする翔に、正紀も何故か納得しかけてしまう。が、どう考えてもあの仏頂面がそこら辺の女子相手に微笑むとは思えなかった。あの男が笑うのは今正紀の前で話している友人の前だけのような気がするのだが。まぁ、でも克己に女子をけしかけてみるのも面白いかも知れない、遠目から見ている分には。
「んあ?そうか?別に良いけど……んじゃ、今度適当に合コンでもやるかー?」
「よろしくな!」
正紀に納得してもらえて翔はそれだけで満足だったのだが、そんな彼に正紀は意地悪く笑った。
「日向も来るんだよ。お前だって興味あるだろ?」
目の前にある正紀の顔が悪戯っぽく笑んだのに、翔は首を傾げる。
「興味、って?」
「あーいうの」
笑んだまま親指で彼が指し示したところには、大きなテレビ画面とその時間にやっているらしいドラマのラブシーン。熱烈なキスシーンが映し出されているそれに、他の生徒達が虚しい野次を飛ばしていたが、それに動きを止めた。分かりやすい反応に正紀は更に笑みを深める。
「おーおー。初々しいねぇ、日向。もしかしてキスもしたことなかったりすんのか?」
「ばっ!き、キスくらい……あ………ぅ……」
そこで先ほどの一件を思い出してしまったのだから堪らない。思わず口元を手で覆い、視線を下げていた。
顔を真っ赤にさせた翔の反応に正紀の笑みがさらに意地悪く歪む。
「へぇ、あるのかー。こりゃ意外」
「篠田……」
自分の分かりやすい態度には心の中でため息を吐くしかない。
目だけ上げて相手を睨み付けたが、興味津々の正紀をそれだけで追い払えるわけも無かった。
「そこんとこ、詳しく聞きたいなぁ?お兄さんは」
身を乗り出してきた相手の態度に、翔は思わず椅子ごと体を引いた。
「篠田こそどーなんだよ、した事あんのかっ」
「俺?俺ねぇ、無いの。だから日向君からどんな感じだったか詳しく聞きたいわけですよ」
嘘だ、お前絶対したことあるだろ。
満面の笑みで言われても説得力がなく、翔は心の中で正紀に叫んでいた。こういうところはどこかいずると似ているような気がする。多分、あの親友から学んだ手法なのだろう。
「一番最近だったら、いつしたんだ?」
オヤジだな。
ニヤニヤ笑いながら突っ込んでくる正紀に翔は口元を引き攣らせた。正紀としては、そういった浮いた話に遠そうな翔にそういった事があると知り、興味が湧いただけだったのだが。これが恐らく克己相手だったら即座に話を打ち切っていただろう。モテる男の武勇伝など聞くだけ腹ただしい。
だが、それにしても少し苛めすぎたか、翔の表情は少し疲れていた。そろそろ話題を変えるかと思ったところで翔がため息を吐いた。
「……15分前だよ」
「はは、悪ぃ悪ぃ日向君があまりにも初々しいから、もう聞かない……ってえええ?」
「で、お前の話って何?」
「ちょ、待った。15分前って何!」
「もう聞かないって言ったよな?篠田」
即座に満面の笑みでそう言われては、何も言えなくなってしまう。仕方なく、正紀も引いた。
「う……くっそ、今度吐かせるからな」
しかし、まさかこの翔にそんな事をする相手がいるとは。知らない間に友人が大人になっていくのが、哀しくもあり羨ましくもあり、感慨深くもある。
つい最近出会ったばかりの友人だというのに、そんな風に思うのは日々濃い一日を共に過ごしているからだろうか。
ため息を吐きながらスプーンを手持無沙汰に弄る正紀に翔はちょっとした疑問を口にした。
「……でも、篠田だって作ろうと思えばいつだって彼女の一人くらい作れるだろ」
いつも嘆くように正紀は恋人が欲しいだの何だの言っているが、彼は女子にも友人が多い。彼の明るい性格から考えれば納得出来ることだが、そんな彼に相手が出来ないということは少しばかり疑問だった。本人は口癖のように彼女が欲しいと言っているのに。
そこを突っ込めば、正紀は手を止め、頬杖を付いた。
「篠田?」
今までの人懐っこい笑みを消し、彼は困ったように眉を下げている。正紀の初めて見る表情に、翔は何か不味いことでも言ったのかと思うが
「なんつーか……実際のところ、俺そんなに彼女作る気ねーんだわ」
盛大なため息を吐きながら正紀は視線を落とす。
今の自分の状況を考えれば、正直なところ恋愛に現を抜かしている場合ではなかった。薬物に体を侵されてしまっている自分を好きになってくれる女性がいるかどうか。知られた瞬間別れを告げられてしまいそうだ。そう考えると虚しいものでしかない。
「んな暇、ねぇし」
「……うん」
「それに……」
不意に浮かんだのは幼馴染の顔だった。幼い頃から共に過ごし、笑ってきた相手。いつか、彼と好きな女性の話で盛り上がれるのだろうかと昔は思ったものだ。
昔は、そうなると信じて疑わなかったのだが。
「いずる、婚約者がいるんだよな。まだ顔を合わせたことはねぇらしいけど」
皿の上にスプーンを投げ出すと、からりと音が響いた。
「んまぁ、良家の長男なんだから、もうそんな事決まっててもおかしくねぇし、アイツも割り切ってるみたいだから、別にそれはいーんだけど」
「ああ」
「だから、アイツは恋愛しない事にしたらしくてさ。そんな事しても無駄だって、そういう割り切り方してて」
どうせ結婚相手は決まっているのだからと、いずるは誰かを恋愛対象として考える事をスッパリとやめてしまった。かといって、婚約者を恋愛対象として考えているわけでもないらしい。彼は結婚式当日まで相手と会う事を拒否したと聞いた。
結婚は彼にとってただの義務なのだろう。そう考えると友人として一言言ってやりたいが、自分が口を出したところで状況が変わるわけでもなかった。
それに、いずるの場合は恐らく両親の離婚が何らかの一因となっている。彼らは大恋愛の末駆け落ちし結ばれたが、離婚した。恋愛という感情がどれほど脆いものか、彼はきっと誰よりも知っていて、無意識のうちに嫌悪しているのかもしれない。彼が一人で傷ついていた時、自分は側にいなかった。それが今でも悔やまれる。
「何か、俺とアイツは本当に兄弟みたいに……いや、多分兄弟よりもっと近いかもしれねぇ。何て言えば良いのか解からないけど、アイツが出来ない事を俺がやるのは……気が引けるっつか、嫌だ。それに、もし俺が女と付き合ったとして、俺は絶対女よりいずるを優先する。彼女と会う日にいずるに助けを求められたらそっちに行くし、二人が崖から落ちそうになってたらいずるを助ける。それが我慢出来る相手ならいーけど」
多分無理だろ?と笑う正紀に翔も少し口元を上げて見せた。
「そりゃ無理だな」
「だろ?」
「篠田は恋愛より友情派か」
「そういうことになるな」
「だったらさっさと仲直りしろって」
「それはまた別問題」
そう言って肩を竦める正紀だが、この二人ならさっさと仲直りするだろうと翔も予感していた。
「あー、んでさ、日向」
話が一区切りついたところで、正紀がどことなく言い難そうに茶色い頭を掻いた。それに目を上げると、彼は翔に視線を止め、
「佐木って、どんなヤツ?」
「……とおや?」
思わぬ問いにきょとんとする翔に正紀はどことなくばつの悪そうな表情になった。
「そ。佐木」
何故正紀がそんな事をわざわざ自分に聞いたきたのかは解からないが、取り合えず
「良い奴だぞ」
「そう言うと思った!」
翔の予想通りの返答に正紀は頭を抱えた。翔にとっては確かに良い奴だ。彼は翔には優しいし、気にかけている。だが、周りには冷徹で容赦ない。そんな容赦の無い面ばかりしか見ていない正紀は、まだ遠也に対する疑念が払拭しきれずにいた。
ああ、と嘆く正紀に翔は首を傾げるしかない。思ったとおりの事を言ったのに、何故そんな態度を取るのかと言いたげだ。
「良い奴だよ、遠也は」
「……お前には優しいもんな、あの天才。一体どうやって手懐けたんだ」
遠也にしろ克己にしろ、翔は一癖も二癖もある相手を懐柔するのに長けている。テーブルの上に身を投げて、上目遣いに翔を観察してみた。確かにある程度可愛い顔立ちをしているが……あの二人はビジュアルだけで懐柔されるようなタイプではない。
「手なずけるって……人を猛獣みたいに」
「アイツらは猛獣だ」
「お前な……」
正紀が遠也を苦手としていることは知っていたが、最近少し仲良くなってきたと思っていたのに。正紀のあんまりな言い草に思わずため息を吐いていた。
遠也は元々友人が多いほうではなかったから、彼に友達が増えたのかとちょっと嬉しかったのだが。やはり、どこか人を寄せ付けない空気は健在だったのか。
「誰かに優しく出来るってのは、良い奴の証拠だと思うけどな」
「……へ」
「篠田が何を知りたいのかは知らないけど、大切な事なら本人に聞いた方が良い。第三者からの情報から判断しようとするのは楽だけど、誤解が生じる可能性が高い」
どこか得意げに語る翔を茫然と見ている正紀に、彼は笑みを向けた。
「って、俺は遠也からいつも言われてる」
「……日向」
「ま、遠也と話してみろよ。大丈夫だ、遠也は良い奴だから」
「なぁ、もう一つ聞いてもいいか?」
「……お前俺の話聞いてた?」
大事な事なら本人に聞けと忠告をしておいたばかりなのに、それを流した正紀を睨むが、彼は慌てて首を横に振る。
「そうじゃない。ちゃんと聞いてたし、佐木とはちゃんと話をする。それは約束する!」
必死に取り繕う友人に翔はため息をついて、「で、何」と聞く体制に入った。それに正紀も安堵し、身を乗り出す。
「川辺教官って、どんな人?」
「……川辺教官?」
思いがけない相手の名前に翔は首を傾げた。
「どんな……と言われても」
何だか喰えない相手としか言いようが無かった。翔の知る限りでは。
何だかんだと言っても自分は彼の思い通りに動いてしまっているし、彼の本当の狙いが未だに掴めない。ただ、まだ警戒すべき相手だとは思っている。
「……やっぱ、よくわかんねぇ相手か?」
黙り込んでしまった翔に少し残念そうに正紀は肩を下げる。それに翔も正直に頷いた。
「うん、悪い……でも、何で川辺教官?」
正紀も例の薬関係で川辺の名前に行きついたのだろうか。それならば情報が欲しい、と下心を持ちつつ問えば、正紀は自分の茶色い髪を撫でた。
「いや、もしかして俺の親父なんじゃねぇかなっとか」
「……はぁ!?」
思いがけない返事に翔は目を剥き、その態度に正紀も苦笑するしかなかった。確かに有り得ない話だ。いずるに言ったらもっと馬鹿にされそうで言えない。
「何でだよ……何か、それらしいこととかあったのか?」
困惑しながらも聞いてくれる翔は優しい。
「いや、何も無いけど。強いて言えばフィーリング?」
「全然ダメダメじゃないかその根拠!ってか、篠田の親父さんって、確か……」
翔は昔の記憶を辿り、そこで言葉を切った。正紀の父親は死んでいるはずだ。詳しい状況は知らないが、それだけは知っている。
翔の言いたい事を察して、正紀は軽く頷いて見せた。
「俺の親父は死んでるけど、顔がメッタ刺しにされてて、誰かも解からない状況だった。だから、もしかしたらそれは親父の死体じゃなくて、誰か他の死体で、もしかしたら親父はどこかで生きてるんじゃないかって、本当はずっと思ってた」
この淡い期待が突然父を失った子どもの心の支えだった。ずっとそう思ってきた所為なのだろうか、そこで少し父に似ている相手を見つけてしまい、確信してしまう。彼はあの父親に違いないと。
でもやはりどこかで気付いてはいる。
そんな事は有り得ない、と。
「ガキだったからな……あの時は。親父が死んだとか、多分受け止め切れなかったんだ俺」
「篠田……」
「大丈夫、それほど期待はしてねーんだ。だから俺、日向の気持ち分かるし、ちょっと羨ましい」
「俺の……って」
「クローンでも幽霊でもなんでもいい。もう一度会いたい」
ふっと哀しげに伏せられた正紀の目に、翔は小さく息を呑んだ。
「ほんと、一度だけで良いのにな」
そう言って笑う正紀の声はどこか弱々しい。それに、胸が苦しくなり拳を握る。
「……でも、篠田」
「うん?」
「クローンは、本人じゃないんだ、よ」
正紀の顔を見て言う事は出来なかった。俯き、自分の足を見つめながらどうにかそう言い切った。言い終わってから無意識のうちに奥歯を噛み締め、握った拳は手の平に爪が突き刺さる。
翔の様子に、酷な事を言わせてしまった事に正紀も察した。けれど同時に安堵する。翔もそれは承知しているのだ。
だが。
僅かに項垂れている友人に、正紀は音を立てて立ち上がった。
「篠田?」
その音に驚く間もなく、彼は翔も立たせて夕飯のトレイを片付け始めた。友人の意図が読めず、翔はただ驚いたまま立ち尽くすが
「日向、ちょっと付き合え」
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