7.あ、間接キスだ……
「兄さん早く食べないと遅刻するぞ!!」
俺の朝は忙しい。
気付けば男4人同居の食事用意担当になっていた俺は、寝ぎたない兄さんを叩き起こし、朝食を食べさせるのが一番大変な朝の行事となっていた。でも、最近は兄さんの恋人深継が一緒に住むようになってからは、そんなに寝坊する事もなくなっていたんだけど……。
今日も兄さんのベッドルームに突撃したら、やっぱりというかなんというか……裸の兄さんと深継が同じベッドに寝ていて、朝っぱらから物凄い精神的ダメージを受ける。
だから、最近は部屋の前から怒鳴る程度で終わらせていた。誠一郎さんも流石に自分の弟の情後姿を見るのが嫌なのか、このモーニングコールを遠目から見ている。でも、今日はその扉を叩く程度では起きなかったから仕方なくベッドルームに突入した。そして、すぐにキッチンに帰ってきた。
「……いつも済まないな」
そんな俺に新聞を読んでいた誠一郎さんが心底申し訳なさそうに謝ってくる。が。それは俺も同じだ。
「いえ、うちの兄こそ毎晩毎晩申し訳ありません……」
お詫びばかりの紅茶を彼に渡すと、苦笑された。
「蒼生、気持ちは解かるが生々しい」
「おっはよう!」
誠一郎さんがそのカップに口をつけたときだった、元気よく兄さんがリビングに入ってきたのは。
「おはよー、蒼生。今日の朝ごはんは?」
「鮭の塩焼きです……」
「魚かー、魚大好き。あー、誠一郎、一人で紅茶飲んでる、僕にも一口」
その時、兄さんが誠一郎さんが持っていたカップを取り上げ、自分の口元に持っていこうとしたのを見てしまう。
ちょ、待て、それは所謂……。
「兄さん!」
思わず強い声で兄さんを呼ぶと、その手が止まり俺の方を驚きの目で振り返る。
「え、あ、蒼生……?」
「他人のモノ欲しがっちゃ駄目って何度言ったら解かるんだ!欲しいなら淹れてあげるから、ちょっと待っててそれは誠一郎さんに返しなさい!」
「……はい」
兄さんは怯えながらそれを誠一郎さんに返し、俺はもう一度紅茶を淹れるべくお湯を沸かす。
そんな俺に、誠一郎さんが心底気の毒そうに「ストレス溜まってるな……」と呟き、それを拾った兄さんが「す、ストレスっ!?蒼生が!?」とオロオロし始めたけど、俺は何も言えなかった。
ストレスとかそんなんじゃなくて、ただ単に好きな人と兄さんの間接キスを止めたかっただけです、なんて言えるわけがないだろ。
お終い
久々に。 |