閑話 中村君の作戦



「佐木、君を天才的な科学者と見込んで頼みがある!」

 大して仲も良くない上にこの間自分の友人である翔を傷つけた中村が真剣な目で遠也を見つめていた。

 あまり相手にしたくなかったが。

「……何です?」

 遠也の根城と化している科学準備室の暗いところでの密会。

「動物を、人間にする薬を作って欲しい!」

 彼の言う動物とは蛇のことだろう。

 それに、そんな薬、作れるわけがない。

「俺はどちらかといえば医学の方に興味がありまして。そんな魔法のような薬は作れません」

「そこを何とか!」

「大体、蛇なんて人間にしてどうするんです?」

 理由だけは聞いてやるかと遠也は息を吐いた。

「よくぞ聞いてくれた!」

 それは間違った選択だと気がついた。

「実はウチのシーサーが!」

「誰」

「キングコブラのシーサーだよ!」

「知りません」

「とにかく、ウチのシーサーが、恋をしたんだ!!」

「おめでとうございます」

「でもそれは人間で、かなわぬ恋……」

「大人しくあきらめたほうが得策だと思いますよ」

「だから、本懐だけでも遂げさせてやりたいと思うんだよ!」

「……で、その気の毒な相手は誰なんです?」

「日向!」

「帰れ」


 玉砕。



終わり。え、終わり!?(汗)