朝は大体目覚めが悪い。
昔の夢を見るから。
自分にとって睡眠は恐怖でしかなかった。
眠りたくない。
そう、思った時期もあったのだけれども。
ぴぴぴぴぴ、と耳に悪い電子音が夢と現実の境を作ってくれる。
まだはっきりしていない脳は眠気を訴えてくるが、そうもいかない。朝食を抜かれるのはゴメンだ。
けど、何か暖かい。離れたくない暖かさが近くにある。
何だろう、と疑問に思い何となく眼を開けて・・・・・・。
眠気が一気に吹っ飛んだ。
「うああああああああ!!?」
「・・・・・・何だ?」
「何だじゃねーよ!!克己!!?」
何故同室の彼が自分のベットで寝ているのだ。
翔が驚いて体を彼から離すと、後ろの固い壁に後頭部を強打した。
後ろ?
この方向に壁は無かったはずだが。
自分のベッドには。
「ここは俺のベッド」
呆れた感じの克己の説明にさらなる疑問が。
何故自分は彼のベッドで寝ていたんだ。
状況を飲み込めない翔に克己は助け船をだした。
「体のどこかが痛くないのか?」
・・・・・・はい?
「えーと、ちょっと待て。俺は体のどこかが痛くなるようなことをしたのか?」
「まぁ、した、というかされたというか・・・・・・」
「どっちだ!!」
しかも誰にされたんだ!!
思わず叫んだ翔に激痛が襲う。
確かに、体のどこかが痛かった。
「あ、あったま痛って〜〜〜〜!!!」
そう。先程壁に打ち付けた頭がそれだけではない痛みを訴えてきたのだ。
「お前、昨日篠田に酒飲まされたんだ。覚えていないのか?」
「全然」
「酔っぱらって俺に随分と絡んできたんだがな・・・・・・」
その台詞からはわずかな怒りが感じられた。
ひぃ!何やったんだ俺!!
「ご、ゴメン・・・・・・じゃあ、俺がここに寝てたのも」
「お前が入ってきた」
「御免なさい、甲賀様・・・・・・」
ベッドで土下座するのは初めてだった。
「じゃあ、先にシャワー使わせて貰う」
「ああ、どうぞどうぞ」
当分は克己に頭が上がらないだろう、と彼を見送りながら思う。
けど、人肌って暖かいよなぁー。
そう思って気が緩んだのか、克己が戻って来るまで彼のベッドの上で二度寝してしまう。
また怒られたのは言うまでもない。
ほのぼの朝。
普段は、克己が翔を叩き起こしてくれます。