要の夏休み日記(小学1年生)
ことしは小学校1ねん生になってはじめての夏やすみです。
ぼくは、小学生になったので自分の部屋をもらいました。
べっどとつくえとくろーぜっとが一つずつあります。
べっどはぼくが大きくなることを考えて買ってもらったので、まだまだ大きいです。
島崎要は低血圧だ。
けれどこれは小学生の定期健診に血圧検査は無いので毎朝の起床状況から判断しての結論だ。
少し前まで両親と同じ部屋で寝ていたから寝坊ということはあまり無かったのだが、今年自分の部屋を確保できたのを良い事に、
ついでに夏休みなのを良い事にひたすら寝続けていた。
平日は毎朝ラジオ体操があるから幼馴染の利哉が迎えに来る。かといって迎えに来るのを起きて待っているのではなく、
寝ているところを利哉に叩き起こされるのだけれど。
でも今日は日曜日。ゆっくり寝ていられるはずだった。
が
不意に大きいはずのベッドが狭く感じ、仕方なく目を開ける。
そこには、父親の寝顔があった。
何故。
と思っても如何せん寝起きの頭。ついでに低血圧の。あまり気にせず再び目を閉じる。
でも
「周星!」
バタン、と結構大きな音を立てて子供部屋のドアが開けられた。
少し怒りがまじった声は母親のものだ。
ああ、またかと要は夢心地に思う。
「な、ナギ!?」
慌てて隣で寝ていた父が身を起こす。
青いパジャマ姿の周星とは違い、ナギは仕事着であるパンツスーツ姿だ。
鬼と密かに囁かれるナギの睨みは結構怖い。
「周星!逃げようとしても無駄だからな!今日はあの検事との会議だって言っただろ!」
私だって嫌なんだ!と彼女はサボる気満々だった周星の腕を掴む。ナギはある程度の武道はマスターしていて、
夫婦喧嘩となるとその技が炸裂する。あまり喧嘩したところは見たこと無いが。
「だったらナギさんも一緒に休もうよ。俺、この一ヶ月一日も休み無かったしさぁ」
「職業意識を持てっていつも言っているんだけどなぁ?」
にっこり、と彼女は怒りの笑みを浮かべ、彼を掴んでいる手に力を入れる。
普段はおっとりしている美人さんだけれど、仕事となるとコレだ。
「行くよ、周星」
「嫌だ!今日は要と一緒に居る!要と遊ぶ!」
うとうとしている要をぎぅ、と抱きしめて周星は首を横に振った。
「子供と遊ぶのは父親の義務だ!権利だ!」
「私だってかなちゃんと一緒に居たい!でも仕事も義務だろ!」
弁護士の喧嘩は難しい言葉が沢山飛び交うなぁ、と要はぼんやり思う。
てか、ゆっくり眠れるのならどうでも良いのだけれど。
そういえば、ココ最近両親は忙しそうだ。
「仕事仕事ってナギさん、俺と仕事とどっちが大切!?」
「仕事」
きっぱりと言い返され周星は言葉を失ったようだった。
「ひ、酷い・・・・・・ナギさん。俺はこんなにナギさんを愛してるのに!」
「愛があっても仕事の無い男に興味は無い」
どきっぱり言われた周星はしくしくと泣きまねを始める。
まぁ、確かに仕事の無い父親なんて嫌だと要も思った。
「もう一人つくる余裕もない仕事なんて嫌だ!」
「うわぁぁ!子供の前で何言っているんだよ!」
ばっしぃぃぃん。
かなり痛そうな音が子供部屋に響いた。
「ナギ・・・・・・痛い」
「当たり前。痛いようにしたんだから!もう周星なんて知らない!」
どうやら母親が部屋から出ようとしたらしい。それを追いかけるように父親がベッドから出て行く。
ああ、お決まりのパターンだ、と思いながら喧嘩の終結を予想し要は夢の入り口に片足を突っ込んだ。
「知らない、はないだろ。俺たち夫婦なんだからさ」
「・・・・・・本当に、何で私もこんな男に捕まったんだか」
ふぅ、とナギはため息をついていたけれどそれに構わず周星は彼女を背中から抱きしめる。
「てか、かなちゃんの部屋に逃げ込むの止めなよ。可哀想」
「だって要、ミニミニナギさんで可愛いし」
「・・・・・・当たり前だろ、親子なんだから。取り敢えず、仕事行くよ」
「う〜ん」
周星の考えるような声にまだごねるのか、とナギは呆れた目を向けた。
けれど、その視線に周星はにやりと笑い
「ナギさんが『お願いv』って言って俺にキスしてくれるなら」
「・・・・・・かなちゃんー」
母親の呼ぶ声に再び現実世界に戻された。
目を擦りながら「なぁに?」と身を起こすと抱き上げられる。
やだなぁ、おれ、もう小学生なのに。
そう思っていると母親はにっこりとすまなそうに微笑んだ。
「ごめんね、かなちゃん。パパがね、かなちゃんにキスして貰わないと仕事に行けないって言うの」
「ナギさん・・・・・・」
そりゃあ確かにさっきミニミニナギさんと言いましたけどね。
目的を捻じ曲げられ周星はがっくりと肩を落とした。これはこれで嬉しいのだけれど、複雑。
「・・・・・・とぉさんにきす・・・・・・?」
寝起きが悪い要は母親の言葉を自分で繰り返し、思い切り顔を歪める。
「やだ」
「!?要反抗期!?」
あっさり拒否されたことには流石の周星もショックを受けた。つい最近まで笑顔で走り寄って来た我が子が。
しかもその顔が愛しい妻とそっくりなだけに衝撃は大きい。
「そうだね、嫌だよねー。こんな仕事もしないようなパパ嫌だよね〜」
ナギはナギでキツイし。
要としては仕事をしていようがしていまいがノーサンキューなお願いなのだけれど、取り敢えず同調しておいた。
「うん。ヤ」
「・・・・・・わかった、ナギさん。行きますから」
白旗を揚げた周星にナギは満足げに笑う。
綺麗な笑顔。
周星は、なんだってそんなに可愛く笑うかなと心の中で悔し紛れに呟くしかない。
要は、どうせこういうオチなんだからさっさと行きゃあいいのにと父に呆れていた。
「仕事をしている周星は格好良いから大好きだよ」
好きな人にそんなことを言われて動かない男は居ないでしょう。
「着替えてくる」
そそくさと自室に戻っていく父親の耳がわずかに紅くなっているのを発見。
相変わらず単純。
「ごめんね、かなちゃん。うるさかったよね」
ナギは要をベッドに寝かせ、ぽんぽんと小さな体を叩いた。
「へーき」
いつもの事だから。
そんな意味が含まれていることにこの母親は気付いているのだろうか。
「今日は早めに仕事終わりそうだから、お買い物行こうか?」
「うん」
「夏服、なんか買ってあげようね。カッコイイの」
「うん」
「じゃあ、行って来るから待っててね、かなちゃん」
きょうは、かあさんととうさんと街にお買い物に行きました。
ぼくのふくを買うときに、おんなとまちがわれて、おんなもののふくをすすめられました。
のりきになったとうさんがかあさんにまたおこられていました。
とうさんはかあさんがかわいいふくを着てくれないからぼくに着せたいらしいです。
かあさんがかわいいふくを着るとやくそくしてどうにかなりました。ふぅ。
子どもはくろうします。
終。
要母は要そっくりです。や、要がそっくりなのか。
お母さん、実はこんな人だったらしい・・・・・・てか設定練り直しただけなんですが。
周星には厳しい、と。
ノーマルなのにBLを書き上げたような気分なのは何故でしょう。
つかギャグなんだか切ないんだかわからん。