春です。
春と言えば
「花見しよ・・・・・・ぶえっくしょん!」
正紀のくしゃみに、いずるは今年も思う。
ああ、春だな、と。
「篠田、花粉症か〜〜」
苦笑顔で同情の視線を向けてくる大志が正紀としては恨めしくて仕方が無い。
じろりと睨んでやるが、その眼は紅く充血していてあまり迫力が無かった。
自室で窓を閉め切ってみたが、室内でもマスクと眼鏡が手放せない。こんな格好で銀行に入ったら強盗と間違われてしまいそうな姿だ。
それを他人事のように、いや実際他人事だが、眺めてくれるいずると大志が心底恨めしかった。
「花粉症はなー、ある日突然来るんだぞー、お前らもきっと来年は俺と一緒にくしゃみをして」
「あ?なんて言ってるのか聞こえないなぁ?」
鼻声な上マスク付きである正紀の発音は物凄く聞き取りづらいものだった。
でも絶対内容は把握しているはずの親友が耳に手を当ててわざとらしく聞いてくるのが気に食わない。
「くっそー、いつか絶対マスク無しで花見をしてみせる!」
僅かな、けれども望みは薄い野望を燃やす元不良がココにいた。
「花見なんてしなきゃいいのにー」
それに冷静に突っ込む大志には、眼が痒くなる。
無理だからこそやってみたいというチャレンジ精神・・・・・・ではなく単なる夢を彼は理解してくれない。
「三宅、いるか?」
コンコン、と軽いノック音と共に私服姿の克己が現れる。名指しされた大志は何故彼が自分を指名してきたのか解からず一瞬怯えた、が
「佐木はどこにいる?」
彼の冷静な問いに何となく察した。
「えと、多分科学科に・・・・・・もう少しで帰ってくると思うからココで待ってたら?」
親切心のつもりだったが、ここでと言われて克己は少し嫌そうな顔をする。まぁ、男ばかりの部屋なんて居ても面白く無いだろう。
そんな彼の隣りには、正紀と同じくマスクをつけた翔がいた。
「ごめ、俺は良いよ・・・・・・こんなんじゃ迷惑」
慌てて手を横に振った翔は最後まで台詞を言う事が出来ず、くしっと小さなくしゃみを一つ。
さらに連続して4回も似たようなくしゃみをしているのだから、何だか可哀想だ。
冷徹と噂される克己もそんな翔の姿に心配げな視線を向けていた。
「そっか、日向も花粉か・・・・・・可哀想に」
「大丈夫だよ、日向、きっと遠也がいい薬くれるから!」
いずると大志は頑張れ、とそんな翔を応援するが
「待て、お前ら俺と扱い違いすぎないか?」
正紀はそう意見したけれど、それを聞いてもらえる日はきっと来ない。
そりゃあ、豪快にくしゃみをする自分よりは、小さくて子猫のようなくしゃみをする翔の方が保護欲をそそられるのはわかる気がするが。
「悔しかったら正紀も俺達の胸をうつくしゃみをしてみるんだな」
ふ、と何だか酷い笑みを向けてくれる親友には流石に怒りを覚えた。
「見てろ!いつか、いつか絶対お前らの胸をうつくしゃみをしてやる!」
「はっはっはー、楽しみにしてるよ、正紀」
「・・・・・・・・・・お前ら何言ってるんだ?」
奇妙な親友関係に克己はくしゃみをする翔の背をさすりつつ疑問を投げかけてみた。
春だからか、ちょっと周りのテンションがおかしい気がする。
こんな奇妙なピンク色の空気の中にいつまでも翔を置いていたくない。
「うー・・・・・・もうどうにかなんないのかなぁ、これぇ」
くしゃみ連続10回をし終えた翔は痒い眼をこすりつつ、毎年訪れるこの季節を嘆いた。
「仕方ないだろう。これはもう国民病だしな、季節が終わるまで我慢するしか」
実際、軍内でも花粉症持ちの人間は多く、おかげで春の任務はそれぞれ自粛している人間も多いと聞く。
軍でも花粉症には頭を悩ませているということだ。
花粉の所為で自然と滲み出てくる涙を拭きつつ、翔は頭を撫でてくる克己を見上げた。
「でも、でも、こんなんじゃ季節終わるまでずっと・・・・・・」
やはり長い台詞となると最後まで言うことが出来ず、一度だけくしっとくしゃみをしていたが、それにもめげずにもう一度翔は克己を見上げ
「克己とキス出来ないだろ!」
・・・・・・あぁ、春だなぁ。
大志は見事に翔に胸を撃ち抜かれて硬直している克己を見て、何となく穏やかな笑みを浮かべたくなった。
平和だ。これがきっと平和と言うんだ。
翔はあまりにも酷い症状に自分が物凄い発言をしたことに気付かないでくしゃみをしているし。
克己は顔に出さないけれどきっと心の中では悶絶しているんだろうなーと、付き合いは薄いが何となくそれくらいは予想出来るようになった。
何だかもう、春だなぁ。
その翔の台詞でしばし花粉症の事を忘れていた正紀がようやく3分振りにくしゃみをした時、いずるが彼の肩に手を置いた。
「正紀、あれくらい俺の胸を撃ってみろよ」
「いや・・・・・・アレは無理だろ」
終
短くてすみませ・・・・・・。
しかもこの題でこんな使い方で・・・・・・。本当に題を作ったあの人に申し訳が無くorz
にっくき花粉。でも私は花粉症ではないです(ニマニマ
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